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銀行員が注目する決算書のポイント

決算書が銀行員にとってなぜ重要なのか

 銀行から融資を受ける際、企業の財務状況を正確に把握するため決算書は不可欠な資料とされています。銀行側は、融資の際のリスクを低減する目的で、貸し出すお金が確実に返済されることを確認しようとします。このために、企業が提出する決算書を詳細に分析し、経営状態や財務健全性に問題がないかを評価するのです。

 特に中小企業の場合、銀行融資は経営安定や拡大のための重要な資金源となります。事業を拡大するための設備投資や新規事業の開始、さらには運転資金の確保など、様々な用途で融資を求める企業が少なくありません。しかし、そのためには銀行から信頼を獲得することが欠かせません。企業側も、決算書を準備し、銀行の決算書の見方に沿って、健全な経営状態をアピールする必要があるのです。

 また、銀行員は融資審査において、貸借対照表損益計算書を中心に、短時間で決算書を精査します。ここで重要なのは、利益だけではなく、企業が持続可能な経営を行えるか、すなわち、安定した財務体質を保てるかどうかを判断する点です。そのため、銀行員は、単年度の利益だけでなく、財務健全性を示す諸指標や資金繰りの状態にも注意を払います。

 結局のところ、銀行員が決算書を重視するのは、融資に伴うリスクを適切に評価し、健全な貸し出しを行うためです。企業にとって銀行融資が重要な資金源であるように、銀行にとっても、信頼できる貸出先を見極めることは非常に重要な業務であり、そのための基本ツールが決算書なのです。

銀行員が注目する決算書の重要な項目

 融資の審査に際して、銀行の決算書の見方が企業の経営者にとって非常に重要です。特に、銀行員は決算書の中でも特定の項目に注目していることがあります。ここでは、そうした注目点について解説します。

売上高・利益

 銀行員はまず、企業の収益性を示す指標である売上高と利益に注目します。売上高は事業の規模や市場での位置づけを、利益は経営の効率性や収益性を反映しています。高い売上高と安定した利益は企業が健全な経営状態にある証拠とされ、銀行にとって融資のリスクを低減する重要な指標です。

自己資本比率

 次に銀行員が注目するのは自己資本比率です。これは企業の財務の健全性を示す指標であり、自己資本が総資本に占める割合を表します。一般に自己資本比率が高いほど、財務が安定しており、経済環境の変化に対する耐性があると見なされます。自己資本比率が高ければ、銀行にとって融資リスクが低くなるため重視される項目です。

流動比率

 流動比率も重要な指標の一つです。流動比率は、企業が短期的な負債をどの程度迅速に返済できるかを示す比率で、流動資産と流動負債の割合で計算されます。この比率が高いほど、企業は短期的な債務返済能力が高いと考えられ、銀行からの融資の際に有利に働きます。

預金残高

 最後に預金残高についても銀行員は注意深く見ます。預金残高が多いということは、その企業が現金や現金同等物を豊富に保有していることを意味し、突発的な支出や短期的な負債の返済に柔軟に対応できる状態にあることを示します。特にキャッシュフローが安定しており、財務的に健全であることを示す重要な指標です。

 これらの指標は、銀行員が決算書を見る際に特に注目するものです。企業の経営者や財務担当者は、これらのポイントを理解し、決算書の内容を銀行員の視点からも考慮することで、融資審査における不安要素を最小限に抑えることができます。

銀行員の決算書の見方

損益計算書の見方

 銀行員が損益計算書を見る際、まず注目するのは、売上高や販売費及び一般管理費などを含む営業利益です。これらは、企業の基本的な収益力を示す重要な指標であります。さらに、銀行員は営業外収益や営業外費用など、事業本来の活動以外から生じる収益や費用にも目を向け、企業の安定した収益性を確認します。最終的に、当期純利益がどの程度なのかを把握し、企業が健全な経営状態にあるかを評価します。

貸借対照表の見方

 貸借対照表では、銀行員は特に純資産の部分を重視します。純資産がプラスであることは、その企業が債務超過でないということを意味し、貸出の判断基準の一つとなります。さらに、流動資産と固定資産のバランス、特に現金や預金といった即時に流動化できる資産の有無を確認し、企業の即時の支払い能力を評価します。また、短期借入金や役員借入金などの負債の構成を把握し、企業の財務体質の健全性をチェックします。銀行員は、これらの情報を通じて、企業が将来にわたって安定した経営を維持できるかどうかを評価しています。

決算書を銀行員目線で読むためのヒント

 銀行からの融資を受けるためには、決算書が重要な役割を果たします。中小企業の経営者が銀行の融資審査を無事に通過したいのであれば、銀行員がどのように決算書を読んでいるかを理解することが大切です。ここでは、銀行の決算書の見方を理解するためのヒントをいくつかご紹介します。

 まず、銀行員は決算書を通して企業の財務状況を迅速に把握します。特に貸借対照表損益計算書に注目し、企業の安全性や財務体質の強さを評価します。そのため、企業としてはこれらの書類を正確に、かつ最新の状態で保持し、融資申請時に提出することが求められます。

 融資審査では、貸借対照表の純資産の部がマイナスになっていないか、特に注意深く見られます。債務超過の状態は融資の障壁となる可能性があるため、経営者としてはこの点を事前に確認し、可能であれば改善しておくことが推奨されます。

 また、銀行員は売上や利益だけを見るのではなく、資産項目や流動資産、固定資産、役員借入金など様々な角度から企業を評価します。そのため、財務体質を強くするためには、これらの項目をどのように改善できるかを常に考え、具体的な対策を講じる必要があります。

 効果的な決算書の読み方を身につける一つの方法は、銀行員になりきって自社の決算書を見ることです。どの項目が強みで、どこにリスクがあるのかを自ら分析し、改善の余地があれば積極的に対策を立てることが重要です。このプロセスを通じて、経営者自身が自社の財務健全性に対する深い理解を得ることができるでしょう。

 最後に、不安や疑問がある場合は専門家や銀行担当者に相談を求めることも大切です。時には第三者の視点が貴重なヒントや解決策を提供してくれることもあります。決算書を銀行員目線で読むためには、これらのヒントを活用し、融資審査における銀行の評価基準を理解することが何よりも重要になります。

まとめ:銀行員が注目する決算書のポイントとは

 銀行から融資を受けるためには、企業が提出する決算書の内容が極めて重要です。中小企業の経営者にとって、融資の審査過程で決算書の見方が不安要素となることも少なくありません。銀行員は、決算書に基づいて企業の財務状況を短時間で把握し、融資の可否を判断します。特に、貸借対照表損益計算書に着目し、企業の安全性や財務体質の強さを評価します。

 重要なポイントとして、銀行員は売上高や利益だけでなく、自己資本比率流動比率、預金残高などを細かく検証します。これらは企業の財務安定性や健全性を示す重要な指標です。また、貸借対照表においては純資産の部がマイナスでないこと、つまり債務超過の状態になっていないかどうかも重要なチェックポイントとなります。

 銀行の決算書の見方を理解し、自社の決算書を銀行員目線で読み解くことは、経営者にとって非常に価値があります。そのためには、売上や利益だけでなく、自社の財務体質を総合的に強化し、安全性を高めることが必要です。決算書を通じて良好な財務状況を銀行に伝えることが、融資の審査を有利に進める鍵となります。

 まとめると、銀行員が注目する決算書のポイントには、売上高や利益はもちろん、安全性や財務体質の強さを示す様々な指標が含まれます。融資を受けるためには、これらのポイントを理解し、決算書を適切に準備することが重要です。